こんにちは。二助企画です。
前回ご紹介した京都三大庚申のひとつ、粟田庚申堂(尊勝院)にいる四猿さんのお話の続きです。
伝教大師(最澄)の作といわれている四猿。
オス猿・メス猿共に4匹いるのですが、その姿には、男女それぞれの生き方や心の在り方を象徴するような違いが表れています。
それは、、、
オス猿:見ざる・聞かざる・言わざるの3匹は、両手でしっかりと、目、耳、口を「密着させて」ふさいでおり、思わざるも含めて、お顔がとても穏やか。まるで一切の迷いを断ち切ったような表情です。
メス猿:よくよく見ると、見ざる・聞かざる・言わざるの3匹の手は、それぞれ目、耳、口に「密着されていません」。ほんの少し隙間があるのです……!
さらに、
見ざる:両目を覆うのではなく、左目だけを手で隠していて右目はしっかりと前を見据えてる
聞かざる:右手は右耳をしっかり覆っていますが、左手は左耳から浮かせている
という大きな特徴が。
そして4匹のメスザルさんの表情は、こころなしか憂いを帯びているのです。
果たしてこれは、何を意味しているのでしょうか?
尊勝院さんは非常に興味深い見解をご説明してくださいました。
オス猿:手で目、耳、口をしっかり覆うことで、世の中の悪しきものを、完全に見ない、聞かない、言わない。従って、心が乱れることが無いので、表情も穏やか。
メス猿:女性は子を育てるために、世間のこともきいておかないといけない。家庭を守っていかないといけないから、色々見ないわけにはいかない。それでもなお「見ざる、聞かざる、言わざる」の教えを忘れずに、心の中で折り合いをつけながら生きている。だからこそ、その表情には、静けさの奥にある苦しみや逞しさが滲む。
尊勝院の四猿は、単なる教えの象徴ではなく、人がそれぞれの立場で「どう心を保ちながら生きるか」を問いかけているように思えます。
触れないことで穏やかさを保とうとするオス猿。
触れながらも、それを自らの中で受け止め、乗り越えていくメス猿。
このメス猿たちの姿には、しなやかな強さと、静かな勇気を感じます。
価値観が多様化し、あらゆる境界がゆるやかに変わりつつある現代。
私たちは今こそ、この四猿の姿から“心の調和”を学ぶときなのかもしれませんね。
二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。
猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。
ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう!
参考文献・サイト・取材協力
・世界の三猿: その源流をたずねて/飯田道夫 人文書院
・驚きの猿文化~世界のサル文化紀行から/上島亮 株式会社三重大学出版会
・お寺のどうぶつ図鑑/今井淨圓 監修 二見書房
・神使像図鑑 神使になった動物たち/福田博通 新協出版社
・大黒山金剛寺八坂庚申堂
http://www.yasakakousinndou.sakura.ne.jp/index.htm
・洛東粟田 尊勝院
https://www.kyoto-info.com/sonshouin/
他
