こんにちは。二助企画です。
前回までにご紹介した日本三大庚申に続き、今回からは京都三大庚申にまつわるお話です。
京都三大庚申とは、大黒山金剛寺八坂庚申堂、粟田庚申堂(尊勝院)、猿田彦神社(山ノ内庚申堂)の3つ。
このうち、大黒山金剛寺八坂庚申堂は、日本三大庚申にも含まれるので、既にご紹介しました。カラフルなくくり猿が並ぶ光景が印象的でしたね。
今回は、東山の静かな森の中にたたずむ粟田庚申堂(尊勝院)をご紹介します。
京都市営地下鉄東西線「東山駅」から徒歩15~20分程の場所に位置する尊勝院。粟田神社と青連院の敷地に挟まれたところにあります。粟田口より東山トレイルコースの坂を登り、青蓮院の飛地境内である将軍塚に向かうと、その途中でたどり着くことができます。

(画像:二助企画)
青蓮院とゆかりの深い天台宗のお寺で、保延年間に陽範阿闍梨が比叡山横川に「尊勝坊」を開創したことが、その始まり。大正4年に、現在の地に移転されました。御本尊は、「おみくじ」の祖として知られる元三大師像。本堂は、京都指定文化財に指定されています。
この本堂には、庚申信仰でお馴染みの青面金剛(しょうめんこんごう)と、比叡山開祖の伝教大師の作と伝わる「不見・不聞・不言」の三猿像をお祀りされているのですが、、、
なんと。
こちらにいるのは、三猿ではなく四猿なのです!!
しかも、オス猿が4匹、メス猿が4匹!
これまで訪ねてきた庚申信仰の寺では見られなかった、とても珍しいかたちです。

(画像② 画像:尊勝院HPよりお借りしました)
画像のおサルさん達は、左にメスのおサルさん2匹、右にオスのおサルさんが2匹写っていますが、実際には両端にもう2匹ずつ。中央のおサルさんと併せて全部で9匹のおサルさんがいます。
残念ながら写真撮影はできなかったのですが、1匹ずつのおサルさんを見つめながら、4匹目のおサルさんについて詳しいお話を伺うことができました。
その姿は、、、
・オス猿さん:体育座りのように両膝を曲げて座っており、左手を左ひざの上に載せています。右手は、顔の横に笠のようなものを掲げています。(上記、画像の右から2番目のおサルさん)
・メス猿さん:胡坐をかいており、視線は少しうつむき加減。両手を合わせてそっとお腹の上に添えています。
この2匹は、「見ざる」「聞かざる」「聞かざる」に当てはまりません。果たして何猿なのでしょうか?
その答えは、、、「思わざる」。
人は、いろんなことを見聞きし、言葉にしてしまいます。そこに対して、心を乱さないようにとの教えの「見ざる、聞かざる、言わざる」の三猿の存在でしたが、こちらの4匹目のおサルさんは、「あれこれ思わない」、つまり心を静め、無心に生きることの大切さを説いているのです。
そういわれてみると、思わざるの2匹は、どこか心安らいだ表情のように見えるような。心のざわめきが少し鎮まっていく感じを受けますね。
そして、驚くべきことに。
この四猿さん達、実は伝教大師(最澄)の作だと言われているのです!!
最澄と言えば、比叡山延暦寺を開いた天台宗の祖。その教えの根底には、「一隅を照らす」という、「自分の置かれた場所で精一杯に光を放つ」という言葉があります。
見ざる・聞かざる・言わざる・思わざる。
四匹の猿たちは、外の世界に振り回されず、自分の心を見つめ、穏やかに光を宿す生き方を象徴しているのかもしれません。
長くなりましたので、今回はここまで。
次回は、オス・メスの四猿の特徴について、心に残るお話をご紹介します。
二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。
猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。
ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう!
参考文献・サイト・取材協力
・世界の三猿: その源流をたずねて/飯田道夫 人文書院
・驚きの猿文化~世界のサル文化紀行から/上島亮 株式会社三重大学出版会
・お寺のどうぶつ図鑑/今井淨圓 監修 二見書房
・神使像図鑑 神使になった動物たち/福田博通 新協出版社
・大黒山金剛寺八坂庚申堂
http://www.yasakakousinndou.sakura.ne.jp/index.htm
・洛東粟田 尊勝院
https://www.kyoto-info.com/sonshouin/
他
