こんにちは。二助企画です。
前回は、日本三大庚申のひとつ、大黒山金剛寺八坂庚申堂の三猿さんについてのお話でした。今回は、現存するもうひとつの日本三大庚申、大阪四天王寺庚申堂で会えるおサルさんについてご紹介します。
大阪市天王寺区にある四天王寺庚申堂。その名前から、天王寺境内にあると思われがちですが、実際には四天王寺の境外堂宇(けいがいどうう)です。天王寺の南大門を背に立ち、南へ2分ほどまっすぐ進むと、右手に東門が見えます。東門を通り過ぎ、敷地にそって右折すると、右手に正面門(南門)に辿り着きます。
門前には「本邦最初 庚申尊」と書かれた石碑。門にかかる寺紋幕には、三猿を思わせる意匠も描かれていて、参拝者を迎えてくれます。

(画像:二助企画)
門から入ってまず目に入るのが手水舎。その屋根の鬼瓦に、お馴染みの三猿を見ることができます。そして、軒丸瓦には「申」の文字。

(画像:二助企画)
更には屋根の四隅にもおサルさんの姿を発見しました。なんとも興味深いのは、このおサルさん達の姿。その見た目は明らかに「見ざる・聞かざる・言わざる」の三猿ではないのです。

(画像:二助企画)
皆、傘あるいは頭巾のようなものをかぶり、肩衣のようなものをまとっているのは共通なのですが、
・2匹は、右手を額に添え、まるで遠くを見渡すかのような仕草。「見ざる」とは逆に、何かをよく見張る姿に見えます。
・1匹は、両手のこぶしをぐっと握りしめ、下方をぐっとにらみつけているかのよう。
・もう1匹は右手に何やら丸いもの(なんとなく、桃や大きいお饅頭のようなもの)を持ってたたずんでいます。
この4匹のおサルさん。悪事を避ける象徴の三猿に対して、なんとなく見張り・守護の役割を担っているようにも見えます。
この4匹についてのストーリーもぜひご紹介したかったのですが、庚申堂の方にお伺いしても辿り着くことができませんでした。皆さんも、こちらを訪れた際には、ぜひこの4匹にも注目してみてください。もしかしたら新しい発見があるかもしれません。その際にはぜひ、二助企画にお知らせくださいね。
次にご紹介するのは、正面に見える立派な庚申堂の中で会えるおサルさん2匹。

(画像:二助企画)
ご本尊の青面金剛童子は撮影禁止ですが、こちらのおサルさんは、撮影許可をいただきました。
・両手を膝にのせてちょこんと体育座りをしているような1匹
・右手に柿のようなものを持った1匹
共に赤い座布団の上に仲良く並んでいます。
ここでは、「猿加持祈祷」という独特の祈りが行われています。この2匹のおサルさんの背中で、体の痛いところを撫でると、「病に勝る」「魔も去る」と信じられているのです。
ところで、このおサルさんが居る庚申堂には、実はちょっとした秘密があります。
それは、この建物が、1970年 の日本万国博覧会の際に、全日本仏教会が休憩所として建造した「法輪閣」だということ!
現在夢洲で開催されている、関西大阪万博もいよいよクライマックスを迎えようとしていますが、こちらの庚申堂は、日本博覧会閉会後にこちらに寄贈されたものなんだそう。万博の賑わいを支えた建物が、50年以上を経て、今も人々の祈りの場として生き続けている。そう思うと、この庚申堂には時代を超えた物語が宿っているように感じられます。
四天王寺庚申堂には、今回ご紹介した以外にも、たくさんのおサルさんに出会うことができます。庚申信仰発祥の地にふさわしく、まさに「猿のワンダーランド」!
次回は、この庚申堂で見られるさらにユニークなお猿さんをご紹介していきます。どうぞお楽しみに!
二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。
猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。
ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう!
参考文献・サイト・取材協力
・世界の三猿: その源流をたずねて/飯田道夫 人文書院
・驚きの猿文化~世界のサル文化紀行から/上島亮 株式会社三重大学出版会
・お寺のどうぶつ図鑑/今井淨圓 監修 二見書房
・神使像図鑑 神使になった動物たち/福田博通 新協出版社
・大黒山金剛寺八坂庚申堂
http://www.yasakakousinndou.sakura.ne.jp/index.htm
・四天王寺庚申堂
