こんにちは。二助企画です。
おサルに願いをシリーズ、前回に引き続き「三猿」にまつわるお話、ここからは、その起源について考えていきます。
「見ざる聞かざる言わざる」の否定の「さる」
おサルさんの「さる」
この語呂合わせが、あまりにも見事であり、日光東照宮の三猿が有名なため、「三猿」については、日本特有のものというイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
しかし!
実は三猿の姿は、日本だけにとどまらず、世界各国で見られるのです!
例えば、大阪吹田市にある国立民族学博物館のコレクションを紹介した「世界の三猿-見ざる、聞かざる、言わざる-(中牧弘允著・東方出版)」には、日本の他に、
中国、台湾、香港、韓国、フィリピン、インドネシア、シンガポール、タイ、インド、ネパール、スリランカなど、様々な国の三猿が紹介されています。
また、三猿の存在は、アジアだけではなくヨーロッパ各国やアフリカ、アメリカ、オセアニアなどでもみられ、同著では世界中の三猿に会うことができます。
ただし、同著で見れる三猿は、伝統的な工芸品や民芸品に限られておらず、コアラや蛙をモチーフにしたものなど、お土産品なども含まれています。三猿の存在が、世界中で親しまれていることがよくわかりますね。
さてこれで、三猿が世界中で愛されていることについては、確認できました。では、その源流についてはどうでしょうか?
実は、三猿の起源については、いくつかの説があります。ここからは、その代表的なものを紹介しますね。
例えば、インドにおいては、三猿はガンジーの教えであると信じられています。
インド独立の父として知られるガンジーは、インドの国民的英雄です。しかし、日光東照宮の三猿の彫刻がつくられたのは1636年(江戸時代初期)頃とされているので、彼の生きた時代を考えると、三猿の教えがガンジーのオリジナルのものであるとは言い難いですね。
では、多くのインド人が三猿をガンジーの教えだと主張するのは、なぜか?そこには、日本との深い関わりがありました。
1933年、平和運動家の藤井日達上人は、仏法の普及と平和運動のために、世界中を巡っていました。同年10月にはインド・マハラーシュトラ州ワルダーに滞在。マハトマ・ガンディーを訪問し「見ざる・聞かざる・言わざる」の三猿像を贈ったのです。
「悪を見ず、聞かず、語らず」というその教えに深く共感したガンジー。彼は、この三猿像を身の回りに置いて大切にされていたそうです。現在も、インドのグジャラート州アーメダバードにある歴史的名所サバルマティ・アシュラムには、当該の三猿があるそうですよ。
そして、もうひとつの理由が書籍の存在。
上記でご紹介した、「世界の三猿」には、インドの小学校の教科書では、三猿の教訓が採用されているという記載があり、その他の書籍でも同様の内容が。ただし、二助企画がリサーチした結果、現時点でそれを裏付ける明確な資料は見つかりませんでした。少し前の教科書の話なのかもしれません。
一方で、インドには子ども向けの「Gandhi And The Three Monkeys」(ガンジーと3匹の猿)という書籍があります。表紙には、3匹のおサルさんのイラストが描かれており、三猿についての紹介があるようです。こちらの本の存在も、影響が大きいかもしれませんね。
長くなりましたので、今回はここまで。
二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。
猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。
ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう!
参考文献・サイト・取材協力
・京都先端科学技術大学『人間文化学部学生論文集』2012 年
・人はサルとどのようにつき合ってきたか/三戸幸久 神奈川県立博物館調査研究報告(自然科学) 第10号 ニホンザルの今・昔・未来 一野生動物との共存を考える一
・日本文化と猿/大貫恵美子 平凡社選書154
・世界の三猿: その源流をたずねて/飯田 道夫 人文書院
・世界の三猿―見ざる、聞かざる、言わざる- 中牧弘允 東方出版
・驚きの猿文化~世界のサル文化紀行から/上島亮 株式会社三重大学出版会
・宮島弥山 大本山 大聖院>今月の説法>「見猿・聞か猿・言わ猿・せ猿」【2020年7月の法話】
https://daisho-in.com/sermon_2007.html
・外務省>トップページ > 国・地域 > アジア > インド > 安倍総理大臣のサバルマティ・アシュラム訪問
※リンク割愛
・インド大使館>ホーム > 大使の演説・インタビューアーカイブ > 殉教者の日(2016年1月30日)におけるシュリ・スジャン・R・チノイ大使閣下の演説