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おサルに願いを㉓猿と馬の深い関係

こんにちは。二助企画です。

 

今回は、厩猿信仰の根本の考え方についてのお話です。そもそも日本人はなぜ、「猿が馬の守り神である」という思考を持つようになったのでしょうか?

 

その起源については、古代インドでの考え方という認識があるようです。厩猿信仰の歴史的変遷について述べた研究論文にも、起源が古代インドにあると示唆する記述がみられます。ですが、二助企画が調べた限りでは、その明確な根拠は見つけられていません。

 

ただある書籍では、インドでは、猿の住む大樹の下で馬を飼う習わしがある、という一文を見つけることができました。大樹に住んでいるおサルさんが、時折木から降りてきて、馬の背に乗って毛づくろいをするとのこと。おサルさんと馬の親しい関係を感じ取ることができます。

 

インドでおサルさんといえば、以前のコラムでも取り上げたハヌマーン。残念ながらハヌマーンと馬に関する直接的な逸話も見つけられなかったのですが、ハヌマーンをモデルとした孫悟空には、馬との深い関わりを示すエピソードがありました!

 

それは孫悟空の仕事の話。孫悟空は、三蔵法師と旅に出る前に、天界で馬の世話をするお仕事をしていたのです。その役職名は、「弼馬温(ひつばおん)」。

 

突然ですが、中国には、「避馬瘟(ピーマーウェン)」という信仰があり、その信仰では、猿が馬の病気を防ぐ存在とされているようなのですが、孫悟空のお役目であった「弼馬温」と何となく漢字が似ていませんか?

 

実は「弼馬温」を中国語で発音するとピーマーウェン。さきほどの信仰と同じ発音なのです。従って、孫悟空が馬の世話を命じられたというお話の源流は、避馬瘟信仰ではないかと言われているのです。

 

ちなみにこのお話とは別に、中国には、神が人間と馬を引き合わせたものの、両者の関係がうまくいかず、猿が仲介役を果たしたという伝説もあります。

 

 

更に!

 

中国には、自然界のすべてを、「木・火・土・金・水」の5つの要素で説明する「五行説(ごぎょうせつ)」と、物事には「生(はじまり)・旺(さかん)・墓(おわり)」という3段階の気の流れがあるとする「三合(さんごう)」という思想があります。

 

この2つと十二支を組み合わせると、

 

猿(申)は「水のはじまり=生水」

馬(午)は「火の盛り=旺火」

 

と位置づけられます。

 

つまり、猿と馬は「水」と「火」の関係にあり、火の勢いを水が制御するという構図になります。この考え方から、「猿は馬を守る存在」とされ、両者の良好な関係が信仰として育まれていったとされています。

 

このように、中国ではおサルさんと馬の深い結びつきを示す複数の言い伝えが存在します。

それらの考えが、仏教の伝来と共に日本にも根付いたと考えるのはごく自然な流れと言えそうですね。

 

 

二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。

猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。

ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

また次回のブログでお会いしましょう!

 

 

参考文献・サイト・取材協力

・京都先端科学技術大学『人間文化学部学生論文集』2012

厩猿信仰の歴史的変遷と祭祀形態の転換期における頭骨の意味/薮内 紫音

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://lab.kuas.ac.jp/~jinbungakkai/pdf/2012/h2012_02.pdf

・奥州市公式ホームページ<東北地方の厩猿信仰

https://www.city.oshu.iwate.jp/section/ushi/07_tomo/mayazaru/main.html

・乗馬メディアエクイア>馬と猿の関係

https://equia.jp/trivia/post-15322.html

・人はサルとどのようにつき合ってきたか/三戸幸久 神奈川県立博物館調査研究報告(自然科学) 第10号 ニホンザルの今・昔・未来 一野生動物との共存を考える一

・猿まわしの系図/飯田道夫 人間社

・アニマルロアの提唱‐ヒトとサルの民俗学/廣瀬鎮 未来社

・人とサルの社会史/三戸幸久・渡邊邦夫 東海大学出版会

・ものと人間の文化史34 猿/廣瀬鎮 法政大学出版局

・日本文化と猿/大貫恵美子 平凡社選書154

 

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