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おサルに願いを㉒おサルさん信仰の正体(厩猿編2)

こんにちは。二助企画です。

 

今回は、かつての日本には厩猿信仰があり、多くの厩ではおサルさんを飼っていたという「証拠」の存在に迫っていきます。

 

二助企画のホームページでは、猿まわしの歴史についてご紹介している箇所があるのですが、そこでは、猿まわしの存在についての歴史的文献の初見は、13世紀に鎌倉幕府が編纂した歴史書「吾妻鏡」であると記載しています。

 

猿まわしが、時間の流れの中で厩猿信仰が姿を変えたものと考えると、「吾妻鏡」より前から、厩ではおサルさん達が飼われていたということになります。その「証拠」、きちんと皆様にお伝えできますよ!

 

それは「梁塵秘抄」(りょうじんひしょう)の中に残されているひとつの歌。

 

まず「梁塵秘抄」とは、後白河法皇編纂の今様歌謡集です。今様歌(うまよううた)とは、平安時代中期から鎌倉時代初期にかけて流行した歌謡のこと。当世風の歌という意味で、いわゆる流行りの歌ということですね。七五調の4句を基本とし、伴奏には鼓や笛、笙などが用いられました。

 

その「梁塵秘抄」の第353番目の歌がこちら。

 

御厩の隅なる飼猿は、絆はなれてさぞ遊ぶ、木に登り。

常磐の山なる楢柴は、風の吹くにぞ、ちうとろ搖ぎて裏返る

 

この歌の前半は、厩の猿が、綱を離れて嬉しそうに木に登って遊んでいるという意味。(ちなみに、絆とは、もともと動物(特に牛や馬)を縄でつなぎとめる綱を指しました)

 

「梁塵秘抄」が、当時の流行りの歌を収めていることを考慮すると、それが編纂された平安時代末期(1180年頃)には、厩でおサルさん達が飼われていたと考えるのが自然ですね!

 

1300年前後になると、厩で猿が飼われていたという証拠の絵図がたくさん見られるようになります。

 

例えば、

 

・西安2年(1287年)に成立した「一遍聖絵」

・正中年間(1324~6年)に成立した「石山寺縁起絵巻」

・延慶2年(1309年)に春日大社に奉納された「春日権現験記絵」

 

などで、厩に繋がれた猿を見つけることができます。

 

絵図ではなく、文章として残されているものでは

 

・藤原定家の「明月記」の建仁元年(1202年)1214日条に『御厩の猿が御所に入り込み、女房がおそれ騒いだ』と記されている

 

などが、その証拠と言えましょう。

 

ここではすべてをご紹介していませんが、これだけの「証拠」があれば、かつての日本では、多くの厩でおサルさんを飼っていたと言い切れますね!

 

当時の人々は、具体的にどのようにおサルさんを飼っていたのでしょうか。上記をたどると、厩に繋いでいたことは明確ではありますが、どんな餌をやっていたのか?お散歩などはさせていたのか?など、二助企画としては興味津々。つい色々と想像力を膨らませてしまいます。

 

さて次回は、厩猿信仰の根本の考え方「猿が馬の守り神である」という思考の起源について、触れていきますね。

 

二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。

猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。

ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

また次回のブログでお会いしましょう!

 

 

 

 

 

参考文献・サイト・取材協力

・京都先端科学技術大学『人間文化学部学生論文集』2012

厩猿信仰の歴史的変遷と祭祀形態の転換期における頭骨の意味/薮内 紫音

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://lab.kuas.ac.jp/~jinbungakkai/pdf/2012/h2012_02.pdf

・奥州市公式ホームページ<東北地方の厩猿信仰

https://www.city.oshu.iwate.jp/section/ushi/07_tomo/mayazaru/main.html

・京都市歴史資料館 情報提供システム フィールドミュージアム<文化史開設シート<今様

https://www2.city.kyoto.lg.jp/somu/rekishi/fm/nenpyou/sheetlist_frame.html

・『梁塵秘抄』における歌謡の伝来/高橋 六二 『日本歌謡研究』第3号(日本歌謡学会)

・人はサルとどのようにつき合ってきたか/三戸幸久 神奈川県立博物館調査研究報告(自然科学) 第10号 ニホンザルの今・昔・未来 一野生動物との共存を考える一

・猿まわしの系図/飯田道夫 人間社

・アニマルロアの提唱‐ヒトとサルの民俗学/廣瀬鎮 未来社

・人とサルの社会史/三戸幸久・渡邊邦夫 東海大学出版会

・ものと人間の文化史34 猿/廣瀬鎮 法政大学出版局

・日本文化と猿/大貫恵美子 平凡社選書154

 

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